口説き物語

【芸能パーティー】芸能系美女を口説いて慟哭した物語

どうも、あやとです。

いかがお過ごしでしょうか。

ここ最近の僕は、
自分の過去の日記とかを
引っ張り出して読んでいたんですよ。

「めちゃくちゃ過去の僕悩んでいるじゃんw」

と思いながら、ちょっと涙ぐみながらも、
過去の自分の試行錯誤の跡を、
読んでいたんですね。

僕はナンパ・恋愛活動を7年間続けていました。

そしてこの7年間は僕にとって
”修行”のような毎日でした。

何度も何度も女性と対峙し、
多くの女性に振られ、
ダメだったら次の女性にアプローチする…

こんな生活を、7年間続けていたんですね。

本当に、色んなことを試行錯誤し、
色んなことを考え続けてきた7年間でした。

今でも、この7年間ほど
コミットしているわけではないですが、
定期的に女性アプローチはしています。

ただ大きく違うのは、
今では”修行”という感覚は正直なくて、
女性アプローチ自体がすごく、

”楽しい”んですよ。

なので、今回は、
僕がなぜ女性アプローチを”修行”ではなく
”楽しいもの”と捉え直すことができたのか、

それについて、ちょっと書きたくなったんで
紹介していきたいと思いますw

「女性アプローチを続けるのがしんどい…」

「女性に振られ続けてきてつらい…」

そんなお悩みを持っている人には、
めちゃくちゃ刺さる内容かなと思いますw

また、
「これから女性アプローチを頑張りたい!」
っていう人でも、

「ふむふむ、こうすればええんやな」

みたいな感じで、読んでくれれば幸いですw

物語形式で読みやすく書いているので、
是非、最後まで読んでいただければと思います。

さて、その前に、今回話す物語の、
前提を軽くお話ししますね。

あなたは、TVに出てくるような
美女を口説きたいと思ったことはありますか?

モデル、芸能系、グラドル、アイドル、キャバ嬢…etc

いわゆる、顔の綺麗さや、スタイルの良さで
お金を稼いでいる女性たちです。

もちろん、男であるならば

「YES!!」

と答えると思うんですよね。

もちろん、僕もそうでした。

僕はナンパ・恋愛活動を7年前からはじめ、
最初は経験人数を追いました。

それは、当時の師匠に

「経験人数が100人を超えるまでは非モテだ!」

と言われたのがきっかけなんですね。

その言葉を受け、僕はひたすら
マッチングアプリやナンパで
女性経験を積みました。

そして、僕は、1年もしないうちに、
経験人数を100人超えることができました。

しかし、100人にたどり着いたから、
何か変わったかといえば、
正直、そこまで変わらなかったんですよ。

今まで非日常だったセックスが
日常になっただけなんですね。

もちろん、それは僕が自分の人生を生きる上で
必要だったことだと思うんですけど、
正直、100人追う必要はなかったなとw

「”ちゃんと”やれば女性を口説けるんだな」

という感覚を、自分の中の常識に
落とし込めれば十分だと思うんですよね。

そして、僕は経験人数を追う中で、
一番ずっと心の中に、
引っかかっていたことがあるんですよ。

「結局自分好みの女性は抱けないんだよな…」

ずっとこんな悩みを抱えていたんです。

実はナンパ・恋愛活動に
コミットしている人あるあるの話で、

理想の女性は口説けないのに、

理想じゃない女性は口説ける。

これは誰しもが通る道なんですよね。

でも、これは実は明確な理由があるんです。

それがなぜかも、今回お話ししますね。

そして僕は、理想の女性を
口説けるようになりたいと思い、
自分で試行錯誤したり、
様々なことを調べました。

そこで、たった1つの言葉が
僕の目に止まったんですよ。

「美女は港区にいる」

「港区に染まった者こそが
美女を手に入れられるのだ」

東京の六本木周辺ですね。

僕はずっと東京住みだったので、
港区にいったことはあるんですが、
確かに、道ゆく女性は綺麗な人ばかりで、
当時はちょっと居心地が
悪かったことを覚えています。

「僕の理想の美女は港区にいるのか…」

そう思い、僕は港区女子を口説くことに
特化したナンパ講習を受け始めたんですね。

やるなら本気でやろうと思って、
住所も思い切って、六本木に移して、
港区の世界に飛び込んだんですよ。

港区の世界はめちゃくちゃで、
そして刺激だらけでした。

詳しいことは後で話していくのですが、
僕は港区の世界に染まるために、
500万円の貯金を全て使い、
港区女子を攻略する旅に出ました。

そして僕は、

モデル、グラドル、芸能系、キャバ嬢など

いわゆる、世間で言われる”美女”と
言われる女性を口説くことができました。

しかし、僕の幸せはそこにはなかったんですね。

港区の世界に染まるということは、
生半可じゃないくらいしんどかったんですよ。

今日は、僕がこの港区女子を攻略することを
引退した話をしたいと思います。

生涯一番で綺麗な美女を
口説いた時の話です。

前置きが長くなりましたが、
そろそろ本編に入らせてもらいますね。

では、どうぞ。

7年前の呪い

僕は夢の中にいる。

すぐに分かった。

この場所を、僕は知っている。

7年前の夏の終わりの夜だ。

大学のサークルの夏合宿の帰り道。

半袖のTシャツを着ている僕は、
少し肌寒そうだ。

でも、そんなこと気にならないくらい、
僕はいっぱいいっぱいだった。

隣には1人の女性。

彼女は僕にピッタリとくっついている。

他のサークルのメンバーは、
合宿の打ち上げという名目で、
居酒屋に向かった。

僕と、彼女だけが、
帰路についていた。

たわいもない話をしながら、
僕らは歩いていた。

彼女と2人で歩くことは、
僕には人生最大の喜びであった。

そして、人生最大の苦悩でもあった。

 

僕は彼女のことが好きだった。

 

そして、彼女も僕のことが好きだっただろう。

 

そんな幸せな帰路は終わりを告げる。

いつも、僕と彼女を引き離す、分かれ道だ。

 

 

…いや、本当は、彼女と別れる道は、
僕自身が決めたのかもしれない。

僕は左の道を行き、彼女は右の道を行くのだ。

「あの…」

僕は右の道に進むチャンスがあった。

彼女と共にに、歩む道だ。

「小さな勇気」を振り絞れば、
右の道に進める。

「たった一言」を伝えれば、
僕は右の道に進めるのだ。

「僕は…」

彼女が僕に顔を向ける。

そして僕は、

 

 

 

 

 

目を覚ました。

自宅のベッドだ。

外を見ると、もう真夜中。

寝ぼけ眼の眼前には、
1人の女性がスヤスヤと寝ている。

化粧は落ちているが、スッピンでも、
キリッとした端正な顔立ち。

ただ、生まれつきの顔ではないのだろう。

少し、綺麗すぎるのだ。

多分、フェイスラインあたりを
少しいじったのだろう。

港区女子によくある、
何度か見た顔だ。

「なんで、僕のベッドで寝てるんだろう」

理由は、ちゃんと分かっている。

なぜなら、僕はこの自宅のベッドで、
何人もの女性と一夜を過ごしたのだ。

辺りを見渡すと、ベッドの脇のデスクには
女性物の服が畳んで置いてある。

寝ている女性のものであろう、
薄緑色のランジェリーが数時間前の
妖艶な時間を思い出させる。

当然、2人とも裸だ。

徐々に頭が冴えて、
昨晩のアポ(デート)の内容を思い出す。

ただ、僕は、自分の口説き方程式通り、
トークを進めた記憶がない。

いや、進めたのだけど、自分の心が、
思い出すことを拒否をしているようだ。

「あれ…なんで口説けたんだろう…?」

眠い頭を無理矢理にでも覚醒させる。

今回の結果を、ちゃんと講師や
仲間に報告せねばならない。

アポの振り返りをし、
成果報告をすることは、
もう日常の習慣となっている。

僕は記憶を遡ることにした。

港区という街

薄く死んでいるような感覚。

何をするにしても、大義で、面倒。

港区は欲望の街だった。

どこを見ても、煌びやかな街の裏では、
男は金を稼ぎ、酒を飲み、
美女を口説くことに頭を使い続け、

女は男から金を稼ぐことを考え、
自分の美貌をさらに磨きあげる。

金と性が入り混じった、欲望の街だった。

僕はそんな街の1人の男になった。

…いや、なろうと必死だった。

当時の僕は普通のサラリーマン。

貯金は過去の副業で、一般的なサラリーマンよりは全然あったが、港区にいる男のほとんどは、不動産の社長や、医者、外資系などハイスペばかり。

金はなかったが、
そんなハイスペの男たちと
肩を並べるために僕は必死だった。

ハイブランドの服を身にまとい、

毎週のようにタワーマンションでパーティーを開いたり、

脳科学や心理学、自己啓発などの本を100冊以上は読みまくり、

会員制限定のバーに通いつめたり、

合コンに誘われれば合コンに行き、

ドクターストップがかかっているにも関わらず、浴びるようにテキーラを飲んで気絶したり、

とにかく港区に慣れるために必死だった。

そして僕は港区女子のLINEをゲットし、
アポにこぎつけ、口説くために
毎日思考をし続けてきた。

港区には本当にさまざまな
顔の整った美女がたくさんいた。

端正な顔面を持っている選ばれた者のみが、
たくさんいた。

当然、僕は興奮していた。

今まではTVの向こうでしか
見れないようなレベルの美女が、
目の前にたくさんいるのだ。

興奮しないわけがないだろう。

港区に移る前にも、
綺麗な女性は見てきたが、
綺麗な女性しかいない空間
というものは、当時の僕には刺激が強過ぎた。

「絶対に口説いてやる…!」

僕は仕事以外の時間は全て、
この港区女子を攻略することに
心血を注いだのだ。

ちょこちょこ結果を
出すことはできた。

しかし、なかなか思うように結果が出なかった。

それはなぜか?

なぜなら、
僕は本当の港区の男ではなく、

雰囲気だけを擬態した、
ただのハリボテだったからだ。

そんなハリボテでも、
必死に擬態をこなすことによって、
抱けた女性はたくさんいた。

しかし、女性は美しければ、美しいほど、
多くの男を見てきているので、
本物か、偽物かを、
見極める力に長けているのだ。

「もう、無理なのかもしれない…」

擬態によって、心身ともに疲弊し、
貯金も底をつき、僕は限界だった。

自分を見失ってきたのだ。

しかし、港区では誰も僕に
手を差し伸べてくれはしない。

港区は、誰もが必死なのだ。

脱落する者を、
誰も引き上げようとはしない。

「もう、僕には無理だ…」

そう思いながらも、
僕は港区で活動を続けていた。

そんな中で、出会ったのが、
芸能事務所に所属している、
本田翼似の美女(以下ツバサ)だった。

そして、そのツバサこそが、
僕の港区の活動に終止符をうつ、
最後の女性だった。

そんなツバサとの出会いの話をしようと思う。

欲望の街で、僕はんでいた。

軽く、僕が港区で学んできた
女性の口説き方をお伝えしよう。

それは簡単に言えば、女性に対して
”マウント”を取ることだ。

港区は金、仕事、恋愛、遊び、

全てにおいてマウントが
取れるかどうかの勝負をする場所だ。

当然、僕も多くの女性に、
”マウント”を取り、女性を抱いてきた。

自分より格上の女性には、
それより格上であることを
擬態し、騙し、欺き、口説くのだ。

しかし、誰もが羨む美女は
多くの”本物の格上”を見てきている。

だからこそ、擬態しても、それを見抜くのだ。

僕は格上であることを示すために、
トークやノンバーバルで
擬態するスキルを磨き上げ、

さらには港区女子がウケそうな、
所謂普通の人ではやらないようなことをやり、
それをトークで表現し、刺激を与え、
自分に興味を引かせるスキルを学んできた。

僕はずっと、一心不乱だった。

そして、擬態することに限界を迎えた。

僕は体調を崩した。

「もう疲れたな…」

「僕はなんでこんなことやってるんだろう…」

僕は六本木の自宅にいた。

今日は日曜日、
僕はベッドから起きることができなかった。

いつもなら日曜日は、

・アポ

・刺激的な遊び

・ナンパ

・ナンパ講習の課題

・自分の口説きの研究

などなど、1日中予定を詰め込む。

多い時は一日で、

・昼前

・昼後

・夕方

・夜

・深夜

という感じで1日5回アポを入れた時期もあった。

今はそんな元気もない。

「今日は1日ゆっくりするかな…」

そう思い、二度寝を始めようと思ったら、
「ポイン」とスマホの音が鳴った。

Googleカレンダーから通知だ。

今日は昼過ぎからアポが1件あったようだ。

「めんどくさいなあ…」

通知には「ツバサ 14時」と書いてある。

すぐにLINEを開き、
同じ女性らしきLINEを見つける。

LINEを見返すと、2週間前くらいに、
会員制のバーで知り合った女性のようだ。

確か、芸能事務所
所属しているとかなんとか
言っていた気がする。

エネルギッシュで身長も
170近くあって、スタイルも
良かったのを覚えている。

その時のイベントで僕は、
狂ったように場を盛り上げていた気がする。

そしたら

「あなたが一番楽しかった!」

と言われて、LINEをゲットした子である。

アポまであと2時間ほどあったので、
確認のLINEだけ入れて、
とりあえず外出する準備をする。

 

 

 

しかし、アポの時間が近づいても、
既読もつかず、音信不通だった。

「死番(女性と連絡がつかなくなること)したか…」

いつもなら落胆するのだけど、
今日は正直、一日中寝たい。

なので、そのまま家に帰り、
ベッドに戻り、再び眠りについた。

 

 

 

 

 

1時間くらい寝てただろうか。

突然電話のアラームが鳴り響いた。

イライラしながらスマホを見ると、
そこには今日のアポを
ドタキャンした「ツバサ」からだった。

イライラを隠せないまま電話に出る。

「ごめんなさい!会うのって今日だったよね!?」

「実は昨日友達と飲みすぎちゃって今起きたのー!」

こちらが何かを言う前に、ツバサは捲し立てる。

うるさいくらい甲高い声だ。

正直、今の僕は寝たかった。

「あ、そう。じゃあ今日は…」

「昨日、友達と〇〇行ったんだけど、
テキーラパーティー?みたいなのをやってて、
飲みすぎちゃったんだよねー!」

「友達なんかお酒飲めないのに
周りに流されちゃって飲んじゃってー!」

「友達の介抱とかもしたんだけど、
ついつい私も飲んじゃってー!」

うるせえな。

こちらのことを一切気にせず、
一方的に喋ってくる。

昨晩、相当楽しく飲んでいたのだろう。

港区の男たちがマウントを、
取ることばかりを考えるのと同時に、
港区の女たちもマウントを、
取るということが日常なのだ。

…いや、後天的に日常になってしまった、が正しいか。

僕はイライラした。

「うるせえな…」

「…え?」

つい、本音が出てしまった。

「テキーラだらだら飲んだくらいで潰れてんじゃねえよ」

「その程度で、浴びるほど酒飲んでんじゃねえ」

「俺だってそんな暇じゃねえんだよ」

ツバサは押し黙ってしまった。

「えっと…ごめんなさい」

「はあ…まあもういいから」

「もう今日はしっかり寝な。俺の方はいいから」

「うん…」

怒りすぎてしまったか…。

ツバサはだいぶ落ち込んでいるようだ。

正直、どうでもいい。

僕はそのまま電話を切り、
ベッドに潜り込み、再び寝た。

 

 

 

 

 

そして数日が経った。

僕は仕事から帰宅し、
ベッドでゴロゴロしていた。

相変わらず、
燃え尽き症候群から抜け出せない。

ここ最近は、仲間からの
パーティーや合コンも、
全て断っていた。

「そろそろ潮時かもな…」

そんなことを思いながら、
スマホが鳴った。

LINEだ。

送り主は、あのツバサだった。

「数日前はごめんなさい…」

「リスケしてまた会えたりしないかな…?」

まさかの逆打診(女性からデート打診されること)である。

向こうから連絡がくるとは思わなかった…

まあこちらも怒った手前、申し訳ない気持ちもあるし…

「OK。そしたら今週の日曜日の15時でいい?」

「はい。ありがとう!」

すんなり、ツバサと再アポが決まった。

「案外怒ったのが効いたのかもな…」

対女性アプローチの原理原則
「押し引きのバランス」
である。

女性は押し続けたら逃げていくし、
逆に引きすぎると、どこかに行ってしまう。

この「押し」と「引き」のバランスは非常に難しい。

特に美女であればあるほど、
緊張で自分のペースを崩しやすくなるので、
「押し引きのバランス」が上手く取れないのだ。

ツバサにとって、男からぐいぐい
来られるのは日常茶飯事である。

だから、僕が電話で怒ったのが、
むしろ周りの男と差別化になったのだろう。

まあ、運が良かったかな。

ツバサレベルの美女とは死番ばかりだったので、向こうからアポを打診されるのは、初めてだった。

「これを引退戦にしてもいいかもしれないな…」

僕は重い体を引きずりながら、
ベッドから抜け出し、早速、
アポの作戦を立てることにした。

ノートPCを開き、
自分の口説きをまとめた資料を開く。

・トークスクリプト

・自分で生み出した口説き方程式

・アポの導線や戦略

などなど

ついでに、ナンパ仲間のアポの振り返りや
戦略などもざっと振り返る。

勝つ確率を上げるためには、
同じタイプの女性とのアポなどを
振り返ることが特に重要なのだ。

7年間の活動の振り返りが、
このPCは入っている。

これらを全て振り返り、
ツバサとのアポの戦略をイメージする。

「うーん、あまりパターン化し過ぎないほうがいいかもしれないな」

アポはまず、女性のタイプを読み、
そのパターンに合わせた
トークスクリプトを繰り出し、
方程式通りのトークを進める。

スクリプトは無数にあるが、
口説きには方程式があるのだ。

しかし、
方程式通りトークを回そうとし過ぎると、
違和感を女性に与えてしまう。

レベルの高い女性であればあるほど、
その違和感を敏感に感じるのだ。

そして、これが、僕が港区女子を攻略する
最後のアポの日になった。

 

 

 

 

 

外は快晴。

昼食を近くで軽く食べ、
僕は駅に向かった。

ツバサとは駅前で合流する。

もうすでにツバサは、そこにいた。

「おつかれ」

「あ、お疲れ様です!」

綺麗な屈託ない笑顔。

最初に会ったのが3週間くらい前になるので、
顔が少しうる覚えだったが、
鮮明に思い出した。

端正な顔立ちと、くっきりとした目鼻。

スラッとして、身長も高い。

…正直、めちゃくちゃ美人だった。

こんなに顔綺麗だったか…

ドキッとしてしまう。

でも、その態度を見せてしまうのは悪手である。

価値を感じてしまったら負けだ。

「じゃあ、行こっか」

たわいもない話をしつつ、先導する。

今日のアポ場所は、
全国展開しているチェーン店、
ルノアールである。

「え…ここ入るの?」

ツバサは面食らっていた。

おしゃれな場所に連れていかれると
思っていたのだろう。

美女であればあるほど、
たくさんの男から口説かれ慣れている。

そして高級で小綺麗な場所に
連れていかれるのは日常なのだ。

だからこそ、あえて、
連れていかれないような場所に行く。

…まあ、単純に僕が昔ほど
意気込んでいないから、
適当に決めたのもあるのだが。

「ここのルノアールのコーヒーは世界一うまいんよ」

適当にあしらいつつ、中に入る。

話しやすいよう、奥の席に座り、
ブレンドを2つ注文する。

「ルノアールなんて来るの久しぶりです」

そんなことを言いながら、ツバサは
ブレンドコーヒーの口をつけ、切り出す。

「先日は本当にごめんなさい・・・」

ドタキャンしたことを、
まだ悔いているようだった。

「…ああ、全然いいよ笑」

そんな感じで、トークはスタートする。

前回のドタキャンもあってか、
トークの主導権はこちらにある。

今日は1月の上旬だったので、
正月の過ごし方についての話になる。

ツバサは秋田県に住んでいたようで、
年末年始は家族と過ごしたそうだ。

秋田美人か…。

確かに、ツバサの肌のきめ細かさには、
東北の血を感じる。

家族とは過ごしたが、あまり、
地元に帰りたい気持ちがあったわけでは
なかったようだ。

まだ、東京のキラキラに憧れがあるのだろう。

前回のパーティーの振る舞いを見ても、
キラキラした経験には価値を感じそうだ。

「俺はずっとポーカーやっていたよ」

自分のエピソードを語る。

これは、事前に準備していたトークだ。

季節の話から自然と、
自分に興味を引かせるトークである。

港区で唯一意気投合した不動産の社長がいて、
その人に誘われたのだ。

女遊び関係なしに、
その人とは仲が良かったので、
久しぶりに遊んだものだ。

その社長はクルーザーを持っており、
年末はその船の上でポーカーをやった。

…僕が10万円ほど負けたのは言わなかったが。

「ええ、すごい!」

案の定食いつきがある。

この反応はまだキラキラした世界に
完全に慣れていない印象。

まだ港区に来てから日が浅そうだな…。

そんな感じで話をしていると、
ツバサが仕事の話をカミングアウトしてくる。

現在は芸能事務所に入っており、
ちょこちょこ舞台に出たり、
TVでもちょい役もやっているとのこと。

「ふーん」と適当に聞き流す。

ただただ自己開示しているだけの感じ。

あまり、自慢話をしたいような印象を受けない。

多分、芸能系の仕事は、
スカウトされたかなんかで始めたのだろう。

そこまで熱を感じない。

「本当はなんか違うことをやりたくて
東京きたんじゃないの?」

感じたことをそのまま話すと、
ツバサはびっくりしているようだ。

コールドリーディングがワークする。

コールドリーディングとは簡単に言えば、事前に相手の情報を知らないまま、相手の気持ちを言い当てるテクニックのことである。

占いや、危ない宗教なんかでも、よく使われる手法である。

短時間で女性と信頼関係を構築する上では最適な方法だ。

しかし、コールドリーディングは、
意識して使うものではない。

コールドリーディングは相手を
しっかり
観察すれば、自然と使える技だ。

「…うん。実は私バレエをずっとやってたんだよね」

そこからツバサは仕事で
悩んでいることを話し始める。

4歳からクラシックバレエをやっていて、
小中高とずっとクラシックバレエ尽くしの毎日。

両親がスパルタだったようで、
だいぶしごかれていたが、
そこまで両親に対して負の感情を
持っている感じではない。

ツバサ自身もバレエが好きだったのだろう。

「本当はバレエの仕事をしたいんだよね…」

「ふーん」

「実はバレエの仕事もできるって言われて、今の事務所は入ったんだけど、」

「あんまりその事務所はバレエとかには、力入れていなくて、どっちかというと舞台とか、そっちの方に出てほしいって言われていて」

「続けようか悩んでいるんだよね…」

「ふーん…」

じゃあやめればいいじゃん、
という言葉が一瞬出かかったが、
まだ本質的な悩みではない気がする。

もっと、違うところに、
ツバサの熱量があると、直感した。

「バレエも、舞台も、結局は自己表現するという意味では一緒じゃん」

「でも、そこに違和感があるんなら、そもそもやりたいことがズレてるんじゃないの?」

ツバサは目を丸くする。

どうやら当たったようだ。

「…本当はバレエをやるというより、バレエを教える仕事がしたいの」

ツバサの言葉に徐々に熱を感じる。

「うん」

「でも、日本で教えるというより、”海外”で教えられるようになりたいんだよね」

…うん?

”海外”というワードが出てきた。

教えることが好きなら、日本人でもいいはず。

ということは、日本人と外国人との二項対立に、何かを感じているのだろう。

まあ、今はコロナ禍というのもあって、どこか足踏みをしているのだろうか。

「そうなんだー」

適当に反応しつつ、思考する。

日本と海外の違い。

そこに何か、深いものを感じる。

そして幼少期からバレエをやっているということは、「自己表現」すること自体は本能的に好きなのだろう。

ということは「教える」ということより「海外」という部分がセンターピンな気がする。

日本の保守的な価値観が、
どうも嫌なんだろうなと判断する。

「…まあ、日本って、すごく保守的だからね」

「俺も音楽の仕事とかやってたからなんとなく分かるけど」

「やっぱり本当の独創性というか、そういったものは海外の方が動きは早い気がするしなあ…」

「海外で活動する方が面白そうだよね」

「……!?」

ツバサの目が大きく開く。

刺さるものがあったようだ。

彼女はさらに話を続ける。

中学時代にイギリスでバレエを
習いに行ったことがあって、
短い期間であったが、
海外での生活が相当好きだったようだ。

日本は海外と違って、
刺激がなくてつまらないとのこと。

だから今は、港区に来てあちこちで
遊び回っているのだろう。

「あやとさんは、刺激的な生活してそうですもんね…」

…まあ確かに刺激的な生活はしているな。

僕はナンパのトークで使うために、自分の過去の話や、実際にナンパのために行った刺激的なエピソードをいくつか話した。

・フランスで仕事をしに行った時、裏路地で浮浪者に刃物を向けられて追いかけられた話

・ヒッチハイクで仙台からヤクザの車で帰った話

・1日で高級焼肉と高級寿司を7件はしごして吐きながら食べた話

「すごい…」

「そんな経験、普通じゃできないですもんね…」

「普段どんな生活しているんですか…」

…ナンパのためとは言えまい。

ツバサが興味津々に話を聞いてくる。

だいぶエピソードトークが刺さったようだ。

こちらに相当価値を感じてくれている。

こういった刺激的な、危険な内容のエピソードトークは男女関係を構築する上で最適だ。

セックス&ドラッグ&ロックンロールというやつだ。

さて、そろそろ男女関係をガッツリ構築するフェーズに移行していこう。

ツバサの話を聞いた感じ、”人生の刺激”が一番のセンターピンなのだろう。

エロトークで男女の関係を構築してもいいが、まだ外は明るく、さらに場所はルノアールだ。

周りには、上品な格好をした、マダム達が井戸端会議をしている。

ツバサのエピソードトークの反応の仕方も、
楽しげというより、しんみりと話を聞くタイプだった。

このしんみりした雰囲気を継続させながら、
恋愛トークで攻めることを判断する。

「まあ、そしたら日本人と付き合うのはつまんないっしょ」

ツバサはさらに目を見開く。

思うことがあったようだ。

だいぶ食いつきが良い。

ツバサの元カレの話になる。

元カレとの交際は刺激が少なかったとのこと。

・高校時代に付き合った元カレと一緒に上京してきた。

・しかし、元カレとの同棲生活は刺激がなくつまらなかった。

・芸能事務所に所属してから港区の遊びを知り、そちらにハマってしまい、別れたとのこと。

「ああ、あんまり自己主張しない彼氏だったんだね」

「男側から自己主張してくれないと、自分も話しにくいし、疲れるよな」

と話すと、

「そうなの!」

めちゃくちゃ刺さる。

恋愛トークも、だいぶワークしてる。

この流れまで持っていけば、ほとんど勝ちは確定だ。

あとは、淡々と畳み掛けるだけだ。

「付き合うんだったら、彼氏にどんどん引っ張って欲しいんですよね…」

「へー」

「…あやとさんはそんな感じですよね?」

「まあ、男がリードするのは当たり前だからね」

自分の恋愛のエピソードトークを話す。

もう何百回と話した、エピソードトーク。

滑らかに話し過ぎると違和感を与えてしまうので、あえて、絞り出すように1つ1つ言葉を紡いでいく。

・元カノとのデートでは、自分が常に誘っていたこと

・基本的にはデートプランは、全部自分が決めること

・全部自分で決めるからこそ、絶対に満足してもらうためにめちゃくちゃ準備すること

・サプライズも大好きで、よくやっていたこと

ツバサの理想の男性像に合わせたエピソードトークである。

恋愛トークのやり方はシンプルだ。

①女性の元カレの話などを聞き、女性の理想のタイプを探る。

②そして、女性の理想のタイプに合わせたエピソードを語り、

③間接的に自分が女性の理想像であることを示す。

これだけだ。

今まで7年間ナンパ・恋愛活動をしたのだ。

エピソードなんて腐るほどある。

「すごいですね…」

「なんでそんな風に考えるようになったんですか?」

ツバサの目がトロンとし始めてきた。

熱っぽく、真っ直ぐこちらを見てくる。

もう勝ちは確定しているが、
最後に自分の”人生観”を語ることにする。

この”自分の生き方”というトークスクリプトで、女性を魅了することが、口説きの醍醐味だなっていつも思う。

 

 

 

ただ今回違うのは…

PCにまとめてきた、今まで作り上げ、精錬させてきたトークスクリプトの中からではない。

僕は、事前に用意していない、
フツフツと心の底から湧き上がる何かを、
1つ1つ言葉にして、形にしていった。

「だって、人間いつ死ぬか分からないし」

「目の前の人がいつ自分の前からいなくなるかなんて、分からないでしょ?」

「本当に愛する人でも、ちょっとしたことで、簡単に失ってしまう」

…なんだろう。

何かモヤモヤする。

「だったら、ちゃんと目の前に愛する人がいるんだったら、」

「ちゃんと愛を届けなきゃいけないじゃないか」

…僕は誰に向かって言っているのだろう?

「永遠の愛なんて存在しないけど、永遠の愛の作り方なら、僕は知ってる」

「たった一言、愛を伝えることをさ、何度も続けることだと思うんだよね」

…その言葉を、本当は誰に伝えたかったんだろう?

「だから、僕は後悔しないように、目の前にいる大切な人を全力で愛したいと思うから」

ツバサは黙って聞いてくれている。

ただ、僕の視界にはツバサはいない。

もちろん、視界に入っているのだけど、僕はツバサを見て、語っていない。

 

そこにはいない、たった1人の誰かに語りかける。

 

…こんなトークスクリプト、僕は知らない。

いや、ずっと、心の底に押し込んでいたのだ。

僕がずっと目を背け続けてきたトークスクリプト。

「永遠に愛します、なんて言葉を、僕は口にできないし、生涯したくない」

「でも、たった一瞬を愛することだけは誓える」

「そしてその一瞬を、何個も積み上げていくことは、できる」

「永遠の愛は存在するものじゃなくて、作るものなんだって」

「小さな勇気を振り絞って「たった一言」を伝え続けること」

「これが本当に永遠の愛の作り方だって」

 

 

 

 

 

その後、僕はカフェを出て、ツバサを家に誘った。

ツバサはびっくりした様子を一瞬見せたが、
黙って着いてきた。

そして現在の時刻は22時。

自宅に着き、ひとしきり愛し合った後、
そのまま寝てしまったのだろう。

昼から何も食べていないので、空腹感がある。

でも、なんかフワフワしている。

その原因は分かっている。

ツバサとのアポで、僕が最後に語った言葉だ。

僕は恋愛、仕事、遊び、人生と
4つのトピックで分け、
多くのトークスクリプトがある。

…でも最後、僕が語った言葉は、
僕が今まで作り上げた
トークスクリプトにはなかった。

「…うん?」

ベッドの隣にいるツバサが起きたようだ。

生まれたばかりの、
ありのままの格好のツバサが、
僕の目を見る。

そしたらツバサは、
何かに気づいたかのように驚いた顔をした。

「…泣いてるの?」

「…え?」

頬に手を当てると、確かにひやっとした感覚。

「え、どうしたの?大丈夫?」

ツバサが心配そうに僕の顔を覗き込む。

僕はツバサの顔を見た。

 

僕は7年間ナンパ・恋愛活動を行ってきた。

口説いた女性の数は、100人から、もう覚えていない。

でも、多分、今目の前にいるツバサは、
今まで口説いた誰よりも、
整った顔だちをしている。

 

彼女はツバサほど、目鼻も顔も整っていなかった。

 

身長もあるし、バレエをやっているからか、スラっとして、スタイルも抜群だ。

 

彼女はツバサほど、身長も高くなく、スタイルもよくなかった。

 

「あれ…?」

「僕は、今まで何をしてきたのだろう…?」

 

7年間の活動の中で、僕は、

彼女より、巨乳の女性を抱いたことがある。

彼女より、頭のいい女性を抱いたことがある。

彼女より、顔がタイプな女性を抱いたことがある。

彼女より、しっかりした性格の女性を抱いたことがある。

彼女より、器用に人生を生きている女性を抱いたことがある。

 

そして、彼女より、見た目も心も美しい女性を抱いたことがある。

 

でも、僕は、

 

彼女だけには、伝えることができなかった。

 

彼女「たった一言」を伝えられなかった。

 

彼女と向き合う「小さな勇気」を持っていなかった。

 

そして彼女を失い、僕は自分を7年間、呪い続けてきた。

 

「…あれ?」

 

僕は、彼女「たった一言」を、伝えられなかったのだ。

 

7年前の夏の日、いつもの分かれ道。

彼女は、僕の言葉を、待っていた。

だけど、僕は彼女に伝えられなかったのだ。

 

ツバサに語った言葉は、
僕が、7年前のかけがえのない、
「たった1人の彼女」に伝えたかった
言葉だったのだ。

 

気づいたら僕はツバサの胸の中で泣いていた。

ツバサは驚いていたが、
優しく僕を抱きしめてくれた。

僕は、慟哭した。

 

 

 

 

 

ようやく、向き合わなければいけないものに、気づくことができたのだ。

 

 

 

 

 

あれから1年が経った。

時刻は夕方、今日は久しぶりのアポである。

先週の合コンで知り合った美容系の女性だ。

美容系なだけあって、
肌も綺麗だし、服のセンスもいい。

自宅を出て、ゆっくり待ち合わせ場所に向かう。

「…うん。今日は勝てるな」

前回の合コンの情景を思い出す。

僕は全力で盛り上げ要因として
「明るい陽キャの男」として振る舞ってきた。

だったら、今日は
ギャップを演出するために、
深い話をしていこう。

深い話の方が、僕は得意だ。

僕にはたくさんの口説き方程式がある。

そして、その方程式に熱量をこめるための、
過去や現在、未来がある。

 

…そして、絶対にブレない、人生論がある。

 

僕はこれからも多くの女性にアプローチして、
口説き続けるのだろう。

もちろん、口説き落とせないことだって、
あるかもしれない。

でも、それでいいのだ。

 

「いつか、また、会えるといいな」

 

彼女は日本のどこかにいるのだろう。

僕はこれからも女性アプローチの旅に出る。

抱けるとか抱けないとかは、この際どうだっていい。

一番大切なのは、「小さな勇気」を持って

「たった一言」を伝えることなのだ。

僕は、それを積み重ね続けていけばいいのだ。

それが、僕のブレない、たった1つの生き方なのだから。

 

届かなくてもいい。

ダサくてもいい。

とにかく愛を伝えるのだ。

 

今日も僕は目の前の女性に、愛を伝えるのだろう。

たった1人の理想の美女に辿り着くまで。

 

 

 

 

 

いかがだったでしょうか。

これ、実は当時の日記や、
この時のアポの振り返りを読みながら、
ブログを書いていたんですけど、

「いやいやw」

「さすがにメルヘンチック過ぎるやろw」

「メンヘラ乙ww」

と自分に思いながら書いていましたw

正直、公開しようかめちゃくちゃ迷いましたww

でも、メルヘンチックやなあと思いながらも、
これ、マジな話なんですよね。

 

僕は7年間のナンパ・恋愛活動において、過去の失恋の傷からずっと逃げようとしていました。

しかし、その傷は、逃げちゃいけない傷だったんですよね。

それを、ツバサは気づかせてくれたんですよ。

僕は7年前「たった一言」を伝えられませんでした。

「小さな勇気」を振り絞ることができませんでした。

だから、僕は7年間も「小さな勇気」を持って「たった一言」を伝える旅に出たんだなって思います。

 

あなたはどうですか?

 

「小さな勇気」を振り絞ることができないくらい、愛おしい「たった1人の女性」はいますか?

「たった一言」を伝えたい「たった1人の女性」はいるでしょうか?

もし、そんな女性と出会えたのなら、あなたは本当に幸せ者なんです。

 

届かなくてもいいんです。

 

届かなくてもいいから、
ちゃんと、あなたの
「愛」を伝えてください。

 

それがあなたの人生を輝かせるのだから。

 

それが「たった1人の理想の美女」を口説くということだから。

 

そして、まだ、出会えていないのなら、探し続けましょう。

探し続けるということは、「小さな勇気」を持って「たった一言」を伝えることを積み重ねていくこと。

 

これがナンパであり、恋愛なのです。

 

僕は幸せ者です。

7年前の彼女という「たった1人の理想の美女」と、出会うことができたのだから。

でも、僕は、「たった一言」を伝えられなくて、彼女を失いました。

だからこそ、次の「たった1人の理想の美女」と出会った時、「小さな勇気」を持って「たった一言」を、

「愛」を伝えられるように、これからも、全力で生きていこうと思います。

 

「たった1人の理想の美女を口説ける物語」を歩んでいこうと思います。

 

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